MESS!!
木下千歳[きのしたちとせ]で生まれ、木下千歳で育って十七年。
今日、俺は幼なじみのとんでもない下半身事情を知ってしまった。
「セックスって、男同士でも気持ちいいんだねー」
とんでもないセリフを軽く言ってのける幼なじみ、広瀬月生[ひろせつきお]の横顔を、俺はぽかんと声もなく見つめる。
学校が終わって、俺の部屋でゴロゴロするのが小学生の時からの俺達の日課だ。
高校に上がってからは、月生の兄貴の雪人[ゆきと]に連れられて夜の街に繰り出すこともあった。
月生もその兄の雪人も、某事務所のアイドルもかくやという顔立ちをしている。
クラブの華やかなライトの下、月生は女の子達に取り巻かれて楽しそうにしていた。
「お前、女の子が好きなんじゃなかったのか」
「好きだよー。柔らかいし、いい匂いだし、気持ちいいし」
生々しい会話を平然と口にする月生の横顔は、何の悪びれもない。
「でも、おれ、どうやらするよりされる方が好きなんだよねー」
「なっ…」
「女の子達にされるのも好きだし、おしりの割れ目とか触られると、こう…」
月生は変なしなをつくって、体をふるっと震わせる。
「…ね。だから、雪兄の知り合いの男の人に頼んで、色々教えてもらっちゃった」
言葉もない。
自分の幼なじみが、こんなにだらしない奴だったなんて。
しかも、両刀ときた。
十七年目の、衝撃。
「そうか。……新しい発見、オメデトウ」
月生の顔を見ずに、頭をかきながらため息をつく。
はっきり言って、もう俺には、月生が分からない。
「それが、そんなにオメデたくないんだよ、ちー」
ちー、と俺を呼ぶ月生の声の調子は幼いころから変わらないのに。
「何が」
目を閉じて、少しイラつきながら、声を低くした。
「その時、気付いたんだけどさ、おれ」
ベッドにもたれて座る俺の、伸ばした足に柔らかい感触が乗っかる。
驚いて目を開いた俺の瞳に、俺に跨がる月生が映った。
――もしもし?
この体勢は、一体、何事。
「何だよ、これ」
「うん。おれ、ちーの事、そういう意味で好き、みたいなんだ」
聞いてないし、会話になってないし。
しかも、首の後ろに腕を回されて体をぴたりと密着される。
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