It's not so far

「電話でもセックスってできるものなんだねぇ…」

感慨深げな鉄平の声に、急に恥ずかしさがこみ上げてくる。

自分から誘った上に、かなり乱れてしまった。

しかも、相当、気持ち良かった。

「…電話でできるなら、会う必要ないな」

会って鉄平の顔を見るのは恥ずかしすぎる。
そうなると、気軽に行き来できない距離がありがたく感じられる。

安堵していた俺に次の瞬間、鉄平が信じられないようなセリフを吐いた。

「ソレとコレとは別でしょーっ!!鳴、俺、来週末に一度帰るから、楽しみにしててね」

「…は?」

「は、でなくて。帰るから、今度はえっちぃ鳴を直接見せてね!」

「……」

電話越しの鉄平の明るい声に、耳まで一気に赤くなる。

「てめぇ…何で黙ってやがった」

「え?何?鳴、何か怒ってる?」

怒ってるさ。
怒ってるとも。

来週会えるなら、あんな醜態を晒したりしなかった。

「帰ってきても、セックスはしない、の刑に処す」

「なっ…!何で急に?さっきまであんなにアハンな感じだったのにー」

「るっさい!この、…バカっ!」

「鳴ー愛してるよー」

「あーうるさいうるさい。もう切るからなっ」

「ちょ、ちょっと待ってよ、な……」

鉄平の言葉の途中で通話終了ボタンを押す。


携帯をベッドの下に放り投げて、つい先ほどまでの自分の言動を反芻した。

いくら、欲求不満だったとはいえ、あれはない。

ないないないない。

ホントない。

俺、今なら恥ずかしさで死ねる。

「鉄平のバカやろー!!」

枕に顔をうずめて、思いきり叫んだ。



←[*] 5/5    
目次へ

MAIN
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -