Black cat -四つ葉-

待ちに待った、日曜日。
安田が連れてきた猫に、俺の顔は自然と緩む。
まだ少し警戒している黒い毛並みに、早く慣れてもらおうと、猫じゃらしを振ったりした。

くりくりとした瞳が愛らしくてたまらない。
猫じゃらしを追って、素早く動く首も。
ふりふりと落ち着かない尻尾もすべてが子猫サイズだ。

「今のお前の、そのマヌケな姿、女子社員に見せてやりたいぜ」

勝手に冷蔵庫からお茶を取り出して注ぎながら、安田が笑う。

「まだいたのかお前。午後から来客があるんだ。早く帰れよ」

一ヶ月ぶりにルカくんに会えるのに、安田が居ては、はっきり言って邪魔だ。

「客ぅ?……まさか例の高校生か」

興味津々の安田を見て、しまったと思った。
そういえばちらっとルカくんの話をしたのだった。

俺の様子を見て、悟ったのだろう。
安田は勝手に決意を口にする。

「よし。絶対帰らないぞ。俺は」

帰れ、帰らない、の問答をしていると、玄関のチャイムが鳴った。
子猫は驚いて、ソファの下に隠れたが、安田は喜々として玄関へ走って行った。

「待て!安田」

子猫に気を取られて、玄関に行くのが安田より遅れてしまう。
慌てて、スキップする安田の背を追ったが、時すでに遅し。

「はぁ〜い!」

猫なで声で、勝手に玄関の扉を開けられる。
ルカくんじゃなかったらどうするんだ、と少し思いながら、安田の服を後ろから引っ張った。

しかし、扉の向こうに居たのは、紛れもなくルカくんだった。

「こ、こんにちは。あれ?えっと…」

少し困惑したその表情が、警戒心を露わにする黒い毛並みの子猫と重なる。
まだ、ソファの下で震えているだろうか。

「いらっしゃ〜い。俺、麻生の同僚で、安田って言います。君のお名前は?」

「あ、畑野琉加、です。こんにちは…」

「琉加くんかぁ。可愛い名前だね。まぁ、どうぞ、上がって」

ふんふん、と値踏みするような無遠慮な視線をルカくんに向けるので、安田の耳を引っ張った。

「いい加減にしろ。ルカくんが怯えてるだろ」

「あ、麻生。い、痛いいたいイタイ!」

「おとなしく、帰るか?」

「帰ります。ごめんなさい。邪魔者は消えます」

そのまま、靴を履いて安田は帰って行った。



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