Black cat -雫-

脱衣所にまで携帯を持ち込んで、メールのやり取りが続く。

こんな所に猫が多い、だとか。
俺が昔飼っていた猫の話だとか。
ノノのこんな所が可愛いだとか。

眠る前までメールは続いた。

『明日は真一さんの情報通り、駅方面を探してみます。
明日に備えて寝ます!
真一さんも、お仕事頑張って下さいね。
おやすみなさい。』

『おやすみ。』





翌日。
昨夜のルカくんからのメールのおかげか、気合いの入りまくった俺は土曜日だというのにやる気に満ち溢れ、無駄に充実した一日を過ごした。

もちろん、ルカくんへの野良猫情報メールも忘れずに送った。

ルカくんからは、今日もノノは見つからなかった、と涙マーク入りの悲しみに満ちたメールが返ってくる。

メールで慰めて、明日の日曜日は俺も公園やアパートの周辺を探すことを伝えると、明るい返事が返ってきた。

『本当に、ありがとうございます。
1人だったらあきらめてたかもしれないけど、真一さんのおかげで頑張れます!』

口説き文句かと見紛うような文面に苦笑しながら、見つかったらすぐに知らせる事を約束して、メールを終えた。





日曜日。
空模様があまり芳しくない。
曇った色の空を気にしながら、公園を探したが、休日で家族連れも多いせいか、野良猫の姿はなかった。

アパートの周辺や、猫の集まりそうな少し薄暗い路地を、三毛の毛並みを探して歩く。
たまにノノの名前を呼びながら、ラーメン屋のゴミ箱の裏を覗いたりもした。

腹が空いてきたので、そのラーメン屋に入り遅めの昼食をとる事にする。
そんなに客は多くないのを確認して、ラーメンを待つ間、店員に猫を探している事を伝えた。
ノノの写真を見せ、見かけなかったかを聞く。

「うーん。ゴメンナサイ。野良猫なんて、そんなに気にして見てないから分からないわ」

済まなそうにする奥さんに続き、旦那さんが声を張る。

「みそラーメン、お待ち!お客さん、野良猫ならこっから南に行ったとこに多いよ」



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