手のひらと瞳

白い石の螺旋階段をシフェルーは駆け上がる。

その足が段をとらえる度に、後ろで結われた金の三つ編みがぱたぱたと揺れた。

足取りは軽やかで、最上階の執務室に着くとノックもなしにドアを開ける。

塔の最上階では、炎の魔導士ダリスが弟子の帰りを今か今かと待っていた。

楓材の白い大きな机の前で行ったり来たりしながら、落ち着きなく煙草をくわえて鋭い犬歯で噛み締める。

息を切らせて室内に入って来たシフェルーを見て、慌てて煙草を灰皿に押しつけた。

「シフェルー、結果は…?」

ドアの取っ手を握ったまま、肩を上下させるシフェルーが、くしゃりと笑う。

「ダリス…!飛びついていい?」

喜びを隠しきれず、ダリスの返事を待たずに駆け出すシフェルー。

ダリスも笑って、両手をシフェルーの為に広げて待った。

「ほら」

いつになく優しげな灰色の瞳にシフェルーは感極まって、思い切り抱きついた。

「おめでとう、シフェルー。よくやった」

「うん…!ありがとう、ダリス」

固く抱擁を交わして、抱き合ったまま互いの瞳を見つめる。

シフェルーは見上げた灰色に甘えるように背伸びをした。

「ダリス、ご褒美は?」

ん、と口を尖らせるシフェルーの無邪気な表情が可愛いらしくて、ダリスはねだられるままに唇を差し出す。

柔らかな唇を音を立てて離し、明るいオレンジ色を見下ろすと、長い睫が揺れて伏せられた。

シフェルーの方から顔を近づけてきて、何度も唇を食まれる。

「…こら」

ダリスが短く言って唇を遠ざけるように上を向くと、無防備になった喉元に唇が吸い付いた。

短いキスで執拗に首筋を攻められて、焦ってシフェルーの肩を掴み、引き離すダリス。

「こらこらこら、待て。何急にその気になってんだ、お前は」

「…ダメなの?」

潤んだオレンジにうっとりとした色を滲ませて、シフェルーは首を傾げる。

「エリーズとかレヴィとか祝いに来るだろ、多分」

「じゃ、来るまででいいから…」

ダリスの言葉を無頓着にかわして、シフェルーは舌を出して煙草の香りのする首筋を舐める。



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