レヴィの想い

[手のひらと瞳 その後]


祝宴のあと。

酔ったシフェルーを支えながら遠ざかっていく後ろ姿をレヴィは感慨深く見つめる。

片付けの手を止めて、エリーズがその横に並んだ。

「いかがしました?レヴィ様」

レヴィが見つめる方角に気付いて、紫の瞳に笑みを浮かべるエリーズ。

「良かったですわね」

「ええ。本当に…」

若き日の記憶に想いを馳せて、レヴィは頷いた。




レヴィがはじめてダリスに会った時、彼はまだ十一歳だった。

先の魔導士長フィラム・グランによる魔法教育は、苛烈を極めた。

魔力の高いこどもを見つけるや、親の手から奪い、刷り込みのように攻撃だけを教える。

兵器に成り下がった少年たちは、少年の――人の心さえも忘れて、戦場でただ、狂っていった。

濁った灰色の瞳を見下ろして、何を想ったか、レヴィは今でもよく覚えている。

「…本当に、良かった」

二人の背中を飲み込んだ闇の向こうを、見上げる。



暗い夜空の彼方は、南――。





『もちろん、彼のこと』



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