手のひらと瞳

シフェルーの部屋に着いた頃には、その身体を殆ど抱きかかえるようにして。

「飲みすぎだろ…」

「うんー。ごめん。皆がお祝いしてくれるから、嬉しくて」

普段から無防備な表情が、酒が入ると更に緩くなる。

ダリスは舌打ちをして、シフェルーをベッドの端に座らせた。

「吐くなら、言えよ」

「むぐ…。だいじょ、ぶ」

ダリスはテーブルの上にあったガラスの水差しを傾けて、揃いの器に注ぐ。

ふらふらしているシフェルーの前に膝を着いてしゃがむと、首に腕が巻きついてきた。

「おい、水」

グラスを持ったままのダリスに、んー、と呻きながら甘えてもたれかかるシフェルー。

そんなシフェルーの上体を抱き留めて、ダリスは今日何度目かのため息をついた。

グラスを持たない手で背中を叩くと、シフェルーのくぐもった声がする。

「ダリスー、…昼間の続きはー?」

不自然に伸びた語尾に、ダリスは笑いを我慢した。

「お前酔ってると途中で寝るだろ」

「そんなの一回だけじゃん〜。ねー、ダリスー」

「いいから。ほら、水飲め」

「むぐう…」

首の後ろを掴んで体を離し、グラスの縁を無理やりシフェルーの口に持って行った。

両手でグラスを持ち、くぴくぴと音を立てて水を飲む姿は幼いこどものようだ。

グラスを落としはしないかと、不安そうに見つめるダリスをよそにシフェルーは一滴残らず水を飲み干した。

「もういいのか」

「うん」

「なら寝ろ。ローブは脱げよ」

ダリスの言葉に返事もなくローブを脱いで、立ち上がるシフェルー。

グラスを拭いて、水差しに重ねて片付けるダリスの横に立って、その腕を引っ張った。

「ダリスも、一緒に」

「分かったから。腕を引っ張るな」

ふらつく足取りのシフェルーに腕を引っ張られたまま、ベッドにダイブする。

「ったく…」

絡みつく手を引き剥がして、ローブを脱ぐ。

シフェルーはうっすらと眼を開けたままダリスから視線を外さずにいた。



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