手のひらと瞳

ため息をついて、ダリスはシフェルーの耳に噛みついた。

腕の中でシフェルーの身体がしなる。

ローブの上からシフェルーの尻を揉んだ瞬間、ノックの音が響いた。

「ダリス、シフェルーはいる?」

ドア越しの籠もった響きでも分かるたおやかな声はエリーズのもの。

「…ほら見ろ」

短く言って、シフェルーの身体を離すとダリスは自らドアに歩んだ。

取っ手を握ってドアを開けると、先ほどのシフェルーと同じように、喜びを隠しきれないといった様子で、エリーズと水の魔導士レヴィが立っていた。

「いるぞ。入れ」

招き入れながらダリスが言うと、ドアを背にして立ったままのシフェルーに近寄る二人。

「おめでとう。シフェルー」

「すごいわ。トップだったんですって?」

下級魔導士の昇級試験に合格したことを口々に祝う二人に、シフェルーは曖昧な笑みを返した。

「ありがとうございます、レヴィ様。エリーズも、ありがとう」

複雑そうな表情を見て、レヴィはふと顎に手を当てた。

「もしかして、お邪魔したかな?」

突然の言葉にシフェルーはあからさまに頬を染める。

「や!…そんな、ことは」

否定の言葉も嘘だとすぐにバレてしまって、シフェルーは益々顔を赤くした。

「分かりやすすぎるんだよ、お前は」

ダリスに頭をこつんと叩かれて、こどものように笑うシフェルー。

「そういことは夜になさいな、ダリス。先にみんなでお祝いしましょう。食事の準備をしてあるの」

エリーズに手を引かれて、四人はダリスの執務室を後にした。




魔導士達の集まりの為に建てられた小さなホールに、エリーズの手配した料理が並ぶ。

二人の他にも、親しくなった魔導士達が祝いに来てくれ、ちょっとした宴になった。

昼過ぎから始まり、日の暮れる頃には、祝いの杯を飲みすぎて酔っ払いのシフェルーが出来上がっていた。

片付けはレヴィとエリーズに任せることにして、ダリスはふにゃふにゃと笑う弟子を部屋へ連れて帰った。



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