白き炎と淡い夢
「率直に申し上げます。シャリム様とシフェルーに、王都に来るようにと、レヴィ様は仰せです」
「何様のつもりだ。話があるなら自分で来いと言っておけ」
剣呑な二人の雰囲気にシフェルーは口を開くこともできず、黙ってやり取りを聞く。
「それができるのなら、もちろんそうしております。レヴィ様はそういう御方ですから」
き、とエリーズに見つめられて、ダリスは居心地悪そうに煙草を取り出した。
「魔導士長を含め特別上級以上の魔導士十七名は現在、王都の外に出ることを禁じられています」
その言葉に、くわえようとしていた煙草を箱に戻して、ダリスはエリーズを見返す。
「この意味が、お分かりですね?シャリム様」
ダリスの返事も待たずに、エリーズは畳み掛けるように続けた。
「ですから、炎の特別上級魔導士であるシャリム様。あなたも王都に戻って頂きます」
「待て、俺は―」
「これは」
反論しようとしたダリスの言葉を遮って、
「魔導士印章を持つ者に科せられた義務です。シャリム様」
強く、エリーズは言い放った。
それから、二人はばたばたと荷をまとめた。
エリーズの訪ねてきた翌朝にはニカの村を発ち、五日かけて王都へ到着した。
馬での長距離移動に慣れていないシフェルーに合わせて、普通よりも長くかかった道中。
それでも王都に着いた頃には、シフェルーは身も心も疲れきっていた。
王宮からほど近い、魔導士の為の建物――ほとんど宮殿のような広い敷地の中、馬から降りるシフェルーをダリスは気遣う。
「大丈夫か。俺はこのままレヴィの所に行くが、お前は少し休んでおけ」
「大丈夫。一緒に行く」
シフェルーの言葉に心配そうな顔をして、身体を支え荷物を持つのを手伝ってやる。
そんな二人をエリーズは不思議そうな面持ちで見つめていた。
セスと他の二頭の馬を厩に預けて、三人は白い建物の中を歩く。
床も壁も柱も、屋根に至るまでが、艶やかな白い石で造られた建物にシフェルーは息を飲んだ。
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