Storm Of Kiss
人の唇というものが、こんなにも柔らかく優しいものなのだと。
どうして知ることができただろう。
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尚哉さんの恋人になって、つまり…キスをするようになって始めて知った事がある。
それは、尚哉さんが実はすっごくキス魔だということ。
朝、起きた後。
夜、寝る前に。
尚哉さんが仕事に行く時。
僕が学校に行く時はもちろん、帰宅した時や、食事の準備をしながら、更にはお風呂あがりにまでも。
毎日がキスの、嵐。
だからその日、お風呂からあがった僕がリビングのソファで寛ぐ尚哉さんの隣に座った時のキスも、いつものキスだと思ったんだ。
いつもと少し違ったのは、尚哉さんの手が僕の腰に添えられた時、そこからゾクリと何かが這い上がってくるのを感じたこと。
お風呂あがりのせいだ、と僕は思った。
尚哉さんの手は、お風呂あがりの僕に比べれば体温が低いはずだから。
「なお…」
そんなかすかな異変に気付いたのか、唇を離し、せつなくなるような声で僕を呼ぶ尚哉さん。
その瞳を見上げると、何だかすごく恥ずかしくなって目をそらしてしまう。
尚哉さんの顔が、近づいてくる気配がした。
唇の感触をおでこに感じ、ぎゅっと目をつむる。
ちゅっと音をたてて、すぐにおでこから唇が離れた。
次の瞬間、思わぬ所にその感触が移った。
耳、だ。
「ぁっ…」
びっくりして、思わず声が出てしまう。
それでも、耳へのキスは止まらない。
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