Dence Fog

決して、目には見えぬものだから。

より明確な答えを求めるのは、必然ではないだろうか。



****



あの日以来、直と俺はキスをするようになった。
触れたいと思えば触れるし、抱きしめたいと思えば抱きしめる。

けれど、妙な違和感を感じる。

あの時俺は直を好きだと言い、直も俺を好きだと言った。

キスも、した。

それなのに違和感が拭えない。

『親戚以上恋人未満』
この感覚が一番正しいと思う。

俺がきちんと言わなかったからいけないのだろうか。
自分の甥として心を傾けているのではなく、直というひとりの人間に愛情を注いでいるのだと。


それとも直は叔父として、親戚として俺の事を好きだと言ったのだろうか。


けれど、直はキスを拒まない。
では、この違和感は何なのだろう。




俺の心の内とは裏腹に、穏やかな日々は過ぎて行く。

直の学校は夏休みを目前に控えていた。
あと五日で夏休みという日の夜。
ベッドの縁に直を座らせて、風呂上がりの髪を乾かしてやりながら問いかけた。

「夏休み、どこか行きたい所あるか?」

「えっ!?どこか連れて行ってくれるの?」

弾んだ声ですぐに返事が帰ってくる。

「あぁ。直の行きたい所、どこでも連れて行ってやる」

休まず手を動かしながら、答える。

「仕事は?」

「一週間くらい夏休みがあるから、大丈夫」

「ホントに!?やったぁ!!」

飛び跳ねんばかりの歓喜を、声だけで表現される。


海だの、テーマパークだの、行きたい所を指折り数えながら直はずっと笑っていた。



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