Dence Fog
決して、目には見えぬものだから。
より明確な答えを求めるのは、必然ではないだろうか。
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あの日以来、直と俺はキスをするようになった。
触れたいと思えば触れるし、抱きしめたいと思えば抱きしめる。
けれど、妙な違和感を感じる。
あの時俺は直を好きだと言い、直も俺を好きだと言った。
キスも、した。
それなのに違和感が拭えない。
『親戚以上恋人未満』
この感覚が一番正しいと思う。
俺がきちんと言わなかったからいけないのだろうか。
自分の甥として心を傾けているのではなく、直というひとりの人間に愛情を注いでいるのだと。
それとも直は叔父として、親戚として俺の事を好きだと言ったのだろうか。
けれど、直はキスを拒まない。
では、この違和感は何なのだろう。
俺の心の内とは裏腹に、穏やかな日々は過ぎて行く。
直の学校は夏休みを目前に控えていた。
あと五日で夏休みという日の夜。
ベッドの縁に直を座らせて、風呂上がりの髪を乾かしてやりながら問いかけた。
「夏休み、どこか行きたい所あるか?」
「えっ!?どこか連れて行ってくれるの?」
弾んだ声ですぐに返事が帰ってくる。
「あぁ。直の行きたい所、どこでも連れて行ってやる」
休まず手を動かしながら、答える。
「仕事は?」
「一週間くらい夏休みがあるから、大丈夫」
「ホントに!?やったぁ!!」
飛び跳ねんばかりの歓喜を、声だけで表現される。
海だの、テーマパークだの、行きたい所を指折り数えながら直はずっと笑っていた。
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