Wind Fall

隣にあるあたたかな温もりを、ただただ感じていたい。

そんな穏やかな日々を、心から。



****



休日の朝は、ゆったりと過ぎる。

今日は特に出かける予定もなかったので、いつもの時間に起きた後、そのまま少しベッドの中で直と戯れて二度寝をした。

そして、二人で並んで広くはない洗面所で歯磨きや洗面をしている。

「あれ…?直、下の棚にコンタクトの箱、ないか?」

「青いのだよね?んー…ないよ」

「しまった…買い忘れた」

コンタクトをしようとして、買い置きがなかったことに気付く。

今日の予定ができてしまった。

「コンタクト、買いに行かないと」

「そうだねえ。尚哉さん、目が悪いもんねえ」

直がこちらをじいっと見つめてくる。

「僕のこと、見えてる?」

小首を傾げて、俺に問う直。

「見えてるよ」

笑いながら直の顔を両手で包んで、少し長めのキスを落とした。

「っ!、ん〜…」

驚いたように直の体が少し跳ねる。

「ね。見えてるだろう?」

「うん。良かった」

キスの余韻に少し頬を染めて、にこりと笑う直。


その表情に、ふとこの家に来たばかりの頃の直のことを思い出した。

以前に比べると、表情が豊かになったな、と思う。

それに、雰囲気が柔らかくなった。

以前の直はどこか硬く、大人びて見えた。

今は子供らしさもきちんとある。

年齢に相応した、と言うべきだろうか。



「尚哉さん。ごはん、食べないの?」

一瞬、心ここに在らずという状態になった俺に、直が不思議そうな目を向けてくる。

その気遣うような潤む瞳に、どうしようもなく愛しさがこみ上げて。

今日、何度目かの口づけを音を立てて交わした。

「よし。ごはん、食べようか」

「うん!」

並んで洗面所を出て、キッチンへ向かった。



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