Wind Fall
隣にあるあたたかな温もりを、ただただ感じていたい。
そんな穏やかな日々を、心から。
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休日の朝は、ゆったりと過ぎる。
今日は特に出かける予定もなかったので、いつもの時間に起きた後、そのまま少しベッドの中で直と戯れて二度寝をした。
そして、二人で並んで広くはない洗面所で歯磨きや洗面をしている。
「あれ…?直、下の棚にコンタクトの箱、ないか?」
「青いのだよね?んー…ないよ」
「しまった…買い忘れた」
コンタクトをしようとして、買い置きがなかったことに気付く。
今日の予定ができてしまった。
「コンタクト、買いに行かないと」
「そうだねえ。尚哉さん、目が悪いもんねえ」
直がこちらをじいっと見つめてくる。
「僕のこと、見えてる?」
小首を傾げて、俺に問う直。
「見えてるよ」
笑いながら直の顔を両手で包んで、少し長めのキスを落とした。
「っ!、ん〜…」
驚いたように直の体が少し跳ねる。
「ね。見えてるだろう?」
「うん。良かった」
キスの余韻に少し頬を染めて、にこりと笑う直。
その表情に、ふとこの家に来たばかりの頃の直のことを思い出した。
以前に比べると、表情が豊かになったな、と思う。
それに、雰囲気が柔らかくなった。
以前の直はどこか硬く、大人びて見えた。
今は子供らしさもきちんとある。
年齢に相応した、と言うべきだろうか。
「尚哉さん。ごはん、食べないの?」
一瞬、心ここに在らずという状態になった俺に、直が不思議そうな目を向けてくる。
その気遣うような潤む瞳に、どうしようもなく愛しさがこみ上げて。
今日、何度目かの口づけを音を立てて交わした。
「よし。ごはん、食べようか」
「うん!」
並んで洗面所を出て、キッチンへ向かった。
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