Rainy Days

吸い込まれるような直の瞳に見つめられて、知らず、涙腺が緩む。

さっきは我慢できたのに、直の柔らかな微笑みを見ていると、どうしようもなかった。

「はじめて、見た」

俺の輪郭を小さな両手で包んで、直はそっと、頬を伝う涙を唇で拭ってくれる。


俺が、いつか。
直にそうしてやったように。





ソファに二人並んで座り、涙が乾くのを待つ。

「尚哉さん」

しばらくして直が遠慮がちに俺の名前を呼んだ。

返事をして横を向くと、

「甘えても、いい?」

抱っこをせがむ子どものように、両腕をこちらに伸ばして思いもよらない事を言う。

「今度は、僕が、尚哉さんに甘えたい」

「直」

伸ばされた腕を受け入れ、直の体を抱きしめる。

すでに自分の体に馴染んだ直の体温。

それでも、愛しいという思いは溢れて止まらない。




腕の中で、直がくすりと笑う。

笑い声を不思議に思って、問う前に、直から話し始めた。

「さっきね…。玄関でお母さんに抱きしめられた時、どうしたらいいか分からなかったんだ。お母さんに、あんな風にぎゅってされた記憶なかったから」

でも、と、直は俺の体に回した腕に力を込める。

「尚哉さんにぎゅってされると、すごく安心する…。ドキドキするけどね、嬉しいし、幸せになる…」


同じ気持ちを胸の内に、どちらからともなく、唇を重ねた。


高ぶった感情は、キスだけで収まるはずもなく。


子どものように、無邪気にじゃれ合いながらベッドになだれ込んで。

そのまま、微睡みに身を任せた。



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