Rainy Days
直をソファに座らせて、俺は直の正面、カーペットの上に膝を折る。
目線の高さを合わせたつもりだったが、直の方が少し上になった。
ここに来たばかりの頃は、こうすればぴたりと高さが合っていたはずなのに。
「直、俺の方こそ、ごめん」
「どうして?」
俺と同じように、謝罪の意味をはかりかねて、直も首を傾げる。
「ここに、ずっといて欲しい、ってきちんと伝えられなくて」
最初、直には母親より俺が必要だと思った。
『母親』の自信たっぷりな態度を見て、不安になった。
そんなものは、俺のエゴなんじゃないか、と。
他の誰より、母親である姉より、俺自身が。
直を必要としているのだから。
それを口にしてしまえば、きっと直を縛ることになる。
直は、優しいから。
俺のために、母親を捨てる決断をするかもしれない、と。
「尚哉さんを、ひとりにしたりしない」
俺の心を見透かしたように、直が静かに言う。
「だから、尚哉さんも」
思いもかけないほど、真っ直ぐな。
「僕を、ひとりにしないでね」
そして、大人びた瞳がそこにはあった。
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