Rainy Days

「尚哉、長い間、迷惑をかけて本当にごめんなさい。直にも…謝らなきゃよね」

迷惑?
俺は、直のことを迷惑だなんて思ってもいない。

むしろ、直を預かることになったのには、感謝しているくらいだ。


けれど、ありのままを伝える訳にはいかないから、姉の勘違いは訂正しないことにした。

「それで、急に呼び出した理由は?」

持ってこられたコーヒーのカップに口をつけ、不機嫌に問う。

返ってきた言葉に、持ち上げたばかりの白いカップを取り落としそうになった。


「もちろん。直を迎えにきたのよ」


絶句している俺に気付かず、姉は更に続ける。

「わたしも直を預けっぱなしじゃいけないって、気になってはいたんだけど、あの人の実家に挨拶に行って、色々あって…」

とにかく、と姉は強引に締めくくった。

「直と一緒に、あの人の実家で暮らす事にするから。今まで本当にありがとう、尚哉」

少女のように微笑んで、何の悪びれもなく残酷な事を口にする姉に俺は既視感を覚えた。

そうだ。

この人の我が儘に、こうやって今まで何度振り回された事か。
一年前も、こんな風に。









何年も音沙汰のなかった姉から、電話があったのは金曜日の夜だった。

週末の休みを何をして過ごそうかと考えていたら、姉からの突然の電話で週末の予定ができたのだ。



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