Rainy Days
直は料理を作る手を休めずに、しばらく考えて、
「明日の朝、決めてもいい?」
と言った。
「いいよ。出かけるのは昼過ぎだから、ゆっくり考えたらいい」
俺の言葉に、ほっとした表情を見せたので、この話は終わりとばかりに話題を変えた。
「何作るんだ?カレー?」
直の手元にある、人参とすでに刻まれた玉ねぎと、丸のままのじゃがいもを見る。
「シチューだよ。ブロッコリーもあったから」
料理にはまっている直は、自信満々と言った様子で笑う。
「楽しみだな。手伝うよ。着替えてくる」
「あ!尚哉さん!!」
寝室に向かおうとする俺の背に、慌てたような声がかかった。
「どうした?」
首を傾げて振り向くと、
「お肉が少ししかなかったから、代わりにミートボール入れてもいい?」
先ほどよりも重大なことを聞くように、不安げな表情でこちらを見つめる直がいた。
「もちろん、いいよ。ミートボールも美味しいよな」
俺は笑って返事をして、上着を脱いだ。
ミートボールとブロッコリー入りのシチューは、とても美味しかった。
翌朝。
いつものように直より先に目覚めた俺は、隣で寝息を立てる度に揺れる桃色の頬に口付けを落とす。
「ン…、…?」
直は俺の腕の中で身じろいで、うっすらと瞳をあけた。
「おはよう。起きるか?もう少し、寝る?」
引き続き、おでこや耳の上あたりにキスをしながら直の返事を待つ。
「んー…、僕、もうちょっと…」
寝る、と言葉を言い切る前に直はとろりとまぶたをおろしてしまった。
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