Snowy Night
「いただきます」
尚哉さんが手を合わせて、さくさくとトーストを食べ始める。
僕も小さくいただきますをして、サラダにのっていた半分のゆで玉子と、ミニトマトだけを食べる。
尚哉さんは、サラダに入っているブロッコリーをフォークにさして、
「サラダに入れるのと、ゆでてマヨネーズかけるのと、どっちが好きだ?」
と聞いてきたりする。
僕はサラダと答え、ブロッコリーを食べると、フォークを置いた。
「もういいのか?」
「…はい」
何だか申し訳なくて、うつ向いたまま答える。
「…そうか。じゃあ、サラダにラップして冷蔵庫に入れててくれるか?」
「はい。あの、トーストは?」
「俺がおやつに持っていくよ」
え?
おやつにトースト?
待って、その前に。
…尚哉さんが、おやつ?
「…ふふっ」
ピシッとスーツを着て、格好良くブラックコーヒーを飲む姿の尚哉さんと、『おやつ』という可愛らしい単語がミスマッチすぎて、何だかおかしかった。
尚哉さんは、
「おやつにトーストは変、かな?」
と言いながら、やっぱり笑っていた。
*
学校から帰るとお風呂を洗って、掃除をした。
毎日掃除をしてるから、あまり汚れてはいない。
だけど、何かをしていないと考えたくないことばかり、考えてしまう。
掃除をして、宿題をして、尚哉さんの帰りを待つ。
本を読んだり、テレビを見たりして六時を過ぎた頃、家の電話が鳴った。
「はい、竹中です」
出るとすぐに、聞き覚えのある尚哉さんの声が、僕の名前を呼んだ。
「あ、直?」
「尚哉さん、どうしたんですか?」
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