Snowy Night
「おはよう。直」
朝の支度を終えて、部屋から出ると尚哉さんが声をかけてくれる。
すでにスーツに着替えて、コーヒーを飲んでいた。
「おはようございます」
食卓にかけると、そこにはサラダとトーストが並んでいた。
「尚哉さん…僕、あの、朝ごはんは食べないんです」
「一口だけでも、食べた方がいい。元気が出るから」
「でも、」
「サラダだけでもいいから」
「……」
お母さんは朝ごはんなんて作ってくれなかった。
夜ごはんすら、作ってくれない日もあった。
尚哉さんは、お母さんの弟なのにお母さんとは全然、似てないなと思う。
尚哉さんの家で暮らすことになって、最初の朝、テーブルを見た時はびっくりした。
ごはんと味噌汁と卵焼きとほうれん草か何かの和え物とヨーグルトと果物まであった。
あまりにびっくりして、誰が作ったんですか?誰が食べるんですか?って聞いちゃったくらい。
朝ごはんを食べないと言ったら、尚哉さんも僕と同じくらいびっくりしていたっけ。
そして次の日から尚哉さんは何とか僕に朝ごはんを食べさせようと、色々なものを作った。
焼き魚だったり、目玉焼きだったり、オムレツだったり、具だくさんのスープだったり。
いろいろしてくれるのはありがたいけど、朝ごはんを食べる習慣がなかったので、食べることができなかった。
それに、あまり眠れていないから、朝は食欲もない。
お昼になればお腹はすくので、学校の給食はほとんど残さず食べることができていたけれど。
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