Wind Fall

玄関で、ただいまとおかえりを言い合って、2人してくすくす笑いながら、買ってきたものを開いていく。

直は新しい靴を玄関に置いて、走って戻ってくると、嬉しそうに笑っていた。



食料品を冷蔵庫や棚に収めて、日用品の袋を片付ける。

これは?と直が、俺が最後に買った袋を開けようとしていた。

「あ、それは…!」

別にしておけば良かった。
俺が止める前に、直は中身を取り出してしまった。

袋から出てきたのは、直の体に合わせて買った、少し小さめの紺色のエプロン。

「これ…」

驚いたように、直がエプロンを広げ、こちらを見つめてくる。

その瞳は、またしても子犬のように潤んでいた。

「直に。料理もするようになったし必要かな、と思って」

夕食を作るときに、さり気なく渡す予定だったが、そんな事は関係なく。

「嬉しい…。ありがとう、尚哉さん」

エプロンをぎゅうっ、と胸に抱いて、心から嬉しそうに目を細める直。

そんな直のおでこに、軽く唇をあてて。

「こちらこそ。いつも、手伝いありがとう」

頭を撫でると、直からもキスが返ってくる。

「…っ、」

しかし、唇が触れる寸前で、それは止まってしまった。

「…眼鏡、外していい?」

意外な事を言う直に、冗談めかして笑いながら、

「やっぱり、似合わないか?」

と、問うと。

「違、う。…すごく似合ってて、…かっこいいから」

直の指が、眼鏡のフレームにかかる。





「いつもより、どきどきしちゃうんだもん…」





頬を真っ赤に染めて言う直の表情に、俺は堪らなくなって。

直の体を抱え上げて、口づける。

「ひ、さ…、っ!〜…ン、……、ん」

フレームにかかっていた、直の指が力の抜けたように、ゆっくりと俺の首にまわる。

眼鏡をしたまま口づけを続けて、抱え上げた直の体を寝室へと運んだ。



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