ふわふわ

フライパンを火にかけて油をひいて、尚哉さんの合図でかき混ぜた卵を半分ほど流し込む。

尚哉さんがしていたように、はしで少しかき混ぜて火が通るのを待つ。

「直、巻く時ははしよりこっちの方がやりやすいよ」

フライ返しを差し出す尚哉さんに、僕はじっとりとした視線を向けた。

「……はしで、できるもん」

「そうか、頑張れ」

尚哉さんと同じようにしたくて、はしを手にしたまま、火のとおってきた卵をくるりと返す。

「あ!」

お手本通りにしたはずなのに、玉子焼きの中心になるべき部分は千切れて上手く巻けない。

「外側をうまく巻ければ大丈夫だから。フライパンを持って、はしの動きに合わせて動かしてごらん」

「うん…っ、と!」

フライパンをひょいっと上下に動かして卵が丸まる動きを助ける。

何とか巻けたけれど、真ん中は千切れたままだ。

「そのままもう一回同じように、巻いてごらん」

お皿に残った卵の半分くらいをフライパンに流し込み、広げる。
尚哉さんに教えてもらいながらフライパンを傾け、巻いてある卵の下にも流し入れた。

「はしだけで巻こうとするんじゃなくてフライパンも一緒に動かすんだ」

「うん!」

気合いを入れ直して、再度チャレンジ。

言われた通りにはしとフライパンを一緒に動かしながら卵を巻いていく。
けれど真ん中の千切れていた部分が、やっぱり上手く巻けない。

お皿に残った最後の卵を同じように巻いても、形は崩れたままだった。

「わ〜変なかたち!失敗しちゃった…」

「初めてにしては上出来だよ」


尚哉さんがお味噌汁と野菜炒めを作ってくれて、玉子焼きのお皿と並ぶ。

尚哉さんが作ったふわふわの玉子焼きを僕が。
僕が初めて作ったぐちゃぐちゃの玉子焼きを尚哉さんが食べた。

「うん。おいしいよ。直」

「尚哉さんの玉子焼きもすごくおいしい」

2人でお互いの玉子焼きをほめ合って、和やかな笑顔での食卓。

もっと玉子焼きを練習して、尚哉さんをびっくりさせてあげよう、と僕は密かに思った。

だって、僕の玉子焼きを食べて笑ってくれる尚哉さんの顔が見たいから。



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