Like A Squall

気持ちを言い当てられた瞬間、ほっぺたがかぁっと熱くなる。

そんな僕の反応を見ただけで、京さんはすべてを理解してしまったみたいだった。

「そうなんだ。片想い中?」

満足げに口の端を上げて、僕をからかい続ける京さん。

あごを抑えられたままの僕は、必死に京さんの顔から目を背けた。

「まさか、両想いじゃ、ないよね?」

馬鹿されたように鼻で笑われて、僕は耳まで熱くなるのが分かった。

京さんは僕をからかって、楽しんでいる。
しかも。

「そうなんだ。……気に入らないなあ」

京さんが、尚哉さんに会いに来た目的が、何となく分かってしまった。

「っ!みやこさん、離して下さいっ!」

「ヤダね。ねぇ、直くん。尚哉と両想いなんでしょ?もうセックスした?」

「な、に…」

何て事を聞くんだろう。
この人は。

「したんだ?どうだった?良かった?」

向けられる敵意と恥ずかしい質問に、涙が出てくる。

拭おうと手を上げるけど、今度はその手を京さんに縫い止められてしまう。

「ぃ、た…!」

自由になった顔を、思い切り京さんから背ける。
京さんの正面にきた僕の耳に、意地悪な表情を浮かべた顔が近づく。

「尚哉、テクニシャンだから良かったでしょ?俺と付き合ってた時からすでに上手かったからなあ…」

やめて。やめて。やめて。

耳に直接響く京さんの声は、尚哉さんの声と違って少し高い。
その声に対する拒否反応で、全身が粟立つ。

そんな僕の反応はお構いなしに、京さんは続ける。

「直くんはいいかもしれないけど、尚哉は少し可哀想だね?」

「…?」

その言葉の意味が理解できずに、京さんへ視線だけを送った。




「だって、尚哉は直くんじゃ、もの足りないんじゃない?」




くすり、と笑う京さんの吐息が首筋にかかった。

僕は嫌悪に瞳をぎゅっと閉じて、思い切り身をよじる。

「っ、…離して、下さいっ!」

「俺が教えてあげようか?尚哉の感じるトコロ」

またしても僕の言葉を無視して、京さんは続ける。

「尚哉の――」

「や、だぁ!!やめてっ…!!」

大きな声で拒絶を示して、京さんの言葉の続きを遮る。

僕の声と重なって、玄関から鍵を開ける音が聞こえてきた。

尚哉さんが、帰ってきたんだ。



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