Like A Squall
僕の顔のすぐ近くにある瞳がきらきらと光って、それが一層、京さんを若々しく感じさせる。
「この前、偶然写真を見てしまって」
「写真!俺も写ってた?」
「はい。全然変わってないから、すぐ分かりました」
「えー!何その写真、見たい!ダメかな?」
「えっと…」
尚哉さんのものだから、と僕はやんわりと断ったけれど、
「俺も写ってるなら、いいじゃん!!お願い!!」
と、手を合わせられて、僕は仕方なく京さんの前に写真を広げた。
「わ。懐かしいなあ」
懐かしそうに写真をめくりながら、これは尚哉と仲良かった先輩だとか、この子は今こいつと付き合ってるなんて。
色々な情報を僕に教えてくれる。
写真に写る日々の思い出も一緒に。
「あ、沙耶香さんだ」
写真をめくる手を止めて、京さんは尚哉さんの横に写る綺麗なの女の人を、ピン、と指ではじく。
「沙耶香、さん?」
何となく嫌な予感がしたけれど、やっぱり。
「そ。尚哉の彼女だった子」
分かっていても、何となく。
いい気分はしない。
しかも、京さんの次の言葉に、僕の思考は尚哉さんの過去に捕らわれてしまった。
「で、俺のライバルだった子」
「…え?」
悪戯めいた笑みを浮かべて、京さんは写真の中の沙耶香さんを指ではじき続ける。
「この女、あんまり好きじゃなかったから、尚哉のこと、盗っちゃった」
言いながら、くすりと笑う京さんの笑顔は写真と違って、少し怖い。
「…、っ」
僕は何も言えないまま、尚哉さんが沙耶香さんや京さんとどんな時間を過ごしていたのかに気をとられてばかりいた。
「あれ?直くーん?俺や尚哉のこと、気持ち悪いと思っちゃった?」
「そんな、事は。思いません」
だけど、今は。
「そ。なら良かった。直くんにはまだ分からないだろうけど、大人には色々あるんだよー」
「…っ!僕にだって、分かります!僕だって、尚哉さんとっ…!」
目の前にいる、京さんが。
コワイ、と思った。
自分が何を言おうとしているかに気づいて、慌てて口を抑える。
けれど京さんは見逃してはくれない。
少年のようにきらきら光っていた瞳が、妖しく瞬いて、僕を見つめる。
「直くん、分かるんだ?」
「…。僕にだって、好きな人くらい、います」
「ふぅん?」
顔を逸らした僕のあごを、京さんの細い指にすくわれる。
「み、みやこさん…っ」
「尚哉が、好きなの?」
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