Sunny Days

幼い頃から複雑な経験をしてきた為か、それとも元々の性格なのか、直は他の同年代の子どもより内面的に大人びている。

子どものようであり、
大人のようでもある。

そんな曖昧な雰囲気を釀し出す直に惹かれるのに、さほど時間は必要なかった。

直が隣で寝ているという事実だけで夜毎少しずつ、けれど確実に俺の理性はすり減っていく。

狭いベッドの上で直が寝返りをうつ度、僅かな身動きをする度に暴れ出す感情を止めることができない。

今も直の寝顔を見てしまい、見なければ良かったと後悔した。
睡眠中にも関わらず、ふっくらと瑞々しい紅色の唇を奪ってしまいたくなる。

無意識のうちに少しだけ顔を近付け、その気配を感じた直がうっすらと目を開いた。

直はまず俺の顔を見上げ、くるまっていたタオルケットの中から左手を出すと、目をゴシゴシとこする。

そして、小さなあくびを一つ。
あくびが終わるともう一度俺の顔を見てふわり、と微笑む。

その時の俺の感情を、どう言葉にすればいいのだろう。

「おはよう」

と、一言声をかけるだけで精一杯だった。

「…ぉはよう、ございます」

寝起き特有の少しかすれた声で、直が返事をする。

「まだ寝てていいよ。今日は学校休みだろう?」

我慢しきれずに手を伸ばし、直の艶やかな黒髪を指で梳きながら優しく囁く。

「ん…尚哉さんは、起きるの?」

俺の手に、くすぐったそうに目を細めてそう聞き返してきた。

「俺は…うん、起きようかな。完全に目が覚めてる」

「じゃあ、僕も起きるー」

言うが早いか、体を起こしてベッドを出る直。

触れることができたのは、ほんの一瞬。

自分もベッドから出て、直のあとを追った。



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