Cloudy Sky

思いもよらない言葉に、一瞬呆けてしまう。

「そんな事、思うはずないだろう…?」

嫌な訳ではない。
けれど、キスをするだけで、直を抱きたいという衝動に駆られるのも事実。

「うそ」

俺の返事が不満だったのか、少し強い声で反論する直。

「嘘じゃない。俺が直とキスするのを嫌がる訳がない」

目を伏せて、きゅっと口を結ぶ直。
その間、直の頭を撫でてやりながらこれまでの態度を振り返る。


確かに、不自然だったかもしれない。
キスをするだけでとまらなくなりそうだった。
だから、自然とキスが減っていたかもしれない。

「…ごめん」

直を、不安にさせるつもりはなかった。

「何で、ごめんなの?」

…違う。

「直を不安にさせたから」

俺は…

「不安に…………僕、本当は、分かってるんだ」

そう、本当は、

「…何、が?」

「尚哉さんが、あんまりキスしてくれなくなった理由」

直に、気付いて欲しかったのかもしれない。



髪に絡めていた指を、頬をつたって、あごへと移動させる。
直は静かに瞳を閉じて、俺の唇を待っていた。

今ここで口付ければ、
きっと、止めることはできない。

そう感じて躊躇う俺の気配を悟ったのか、直がゆっくり眼を開けた。
不安そうで、今にも泣き出しそうな。
けれど、どこか凛とした顔で直は俺を見つめる。
そんな表情に、様々な思いが過る。


驚き、欲望、背徳感、そして、愛しさ。


口付けようと意を決して直の腰を引き寄せた時、思いがけず頬に柔らかなものが触れた。
直から、俺にキスをしてきたのだ。

俺の頬に、唇を寄せて。
少し震えた声で、直は言う。

「あのね、僕」

服を握りしめる直の指先に、力が入るのが分かった。

「尚哉さんになら…どんなことされても、平気だよ?」

答える代わりに、激しく、口付けて。
きつく、直の体を抱き締めた。



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