Cloudy Sky
その肌に触れるたび、罪の意識で心は曇る。
けれどそれでも、体は渇望をやめない。
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直の体に、初めて触れたあの夜。
初めて、ではないがはっきりと性的な意図を持って触れたのは初めてだった。
躊躇いがなかったわけではない。
直がいくら精神的に大人びていても、体がそれに伴っているとは限らなかったからだ。
直の体に触れた手を一度は引いて、我慢した。
邪な思いを抑えつけ、欲求を振り払って。
けれど、そんな俺の理性をいとも簡単に打ち砕いてしまった、直の行動。
快感に潤んだ瞳。
上気した頬。
艶めく唇。
俺の手を取り、もっと、とせがんだ掠れた声。
思い出しただけで、俺の中の雄が暴れ出す。
日常的になったキスでさえも、あの夜を思い出させ、欲情してしまう。
まさに、今も、その最中だ。
いつものように、ソファに腰をかけて。
いつものように、口付けを交わす。
それだけで、体の奥に熱い物が込み上げてくる。
俺はこんなにも耐え性のないやつだったろうか?
まるで、思春期の高校生か、発情期の猫のようだ。
直を、抱きたい。
直の全てが、欲しい。
そんな俺の欲望に、直は気付いていないだろう。
やっと慣れてきた触れるだけのキスに頬を染めている。
気付かせてしまったらどうなる?
軽蔑されるだろうか?
それでも、俺は…
「尚哉さん…?どうしたの…?」
唇を離したあと、直に話かけられはっとする。
「いや、どうもしないよ」
平静を装って、指先で直の髪を弄ぶ。
「…尚哉さん」
直の瞳が、見たことのない光を湛えて、
「僕と、キス、するの嫌になった?」
微かに、揺れた。
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