Dence Fog

直は慣れていないのだ。


ただ見つめ合うこと。
触れ合うこと。
抱き合うこと。
キスの、ひとつにも。


俺の動作に、どんな反応をすればいいか分からない。
俺の言葉に、どんな返事をすればいいか分からない。

分からないから、僅かな間が生まれる。
俺はそれを、違和感だと思った。


違和感と言えば確かにそうなのだが、理解してしまえば単純なこと。
何も不安に思うことなどなかったのだ。

「尚哉さん…?」

黙り込んでしまった俺におずおずと触れてくる直。
その体を持ち上げて、自分の膝の上に座らせた。

「ゎ、あっ!!!」

驚いて声をあげられるが、笑いながら頭を撫でてやるとすぐにおとなしくなる。



きっと今、直の頭の中はパニック状態なのだろう。

そんな風に考えると違和感だと思っていた妙な間も、合わない目線も可愛らしく思える。

髪を撫で、しっかりと腕の中に抱きしめて。


そうすると、直の心臓が暴れる音までもが聞こえてきそうだ。


その鼓動に、俺も胸を熱くする。


ゆっくりと、自分の体温が上昇していくのを感じた。



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