Dence Fog

言われた通り閉じまいとしている直の唇は、俺の情欲をいっそう煽る。

濡れた舌が絡み合う音も感触も、頭の芯が溶けてしまいそうな程に甘やかで愛しい。

「…んっ…ふ、ぅ…」

口付けに夢中になっていた俺は直の苦しそうな息で、ふと自分を取り戻した。

慌てて唇を離し、直の髪をすく。

「ごめん!!…大丈夫か?」

「…は、ぁっ……はー…」

直の口から荒い息が漏れる。
直の頭を撫でながら隣に腰かけ、呼吸が落ち着くのを待つ。


暫くして、呼吸を整えた直が口を開いた。

「今の、キス…なに?」

一瞬答えに困ったが、直の真剣な瞳を見つめながら答えた。

「今のは…恋人同士のキス」

「そ、そうなんだ…」

赤くなった自分の頬を手で抑えながら、何とも言えない相槌が帰ってくる。

「直、分かってるのか?」

「…ぅん?」

「直に恋人同士のキスをしたんだから、俺にとって直は恋人だってこと」

微苦笑と共に、直には意外だろう言葉を発する。
案の定、直はキョトンと目を丸くして俺を見つめ返すばかりだった。

俺も笑みを湛えて見つめ続ける。


絡む視線に直の頬は赤みを増していく。


そして、顔中真っ赤にしながらも辛うじで頷いた。

「……ぇ?…ぇと、うん…」

そんな直の態度を見てやっと理解した、違和感の正体。



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