02

とらわれたのは、心?

それとも、体だろうか。






「聖(ひじり)。髪、伸びたな」

僕の恋人の宗(そう)ちゃんはそう言って、何の気なしに、僕の髪に触れる。

「んー。そうかな」

「そうだろ。結べそうだぞ。これ」

ソファの背から飛び出した僕の後ろ頭に周り込んで、髪を束ねられてしまった。

「ほら見ろ。切りに行けよ」

「…。嫌だ」

「何で」

「知ってるくせに。美容院、嫌いだもん」

「切るのが嫌なら、結べ」

手で束ねていた髪を、その辺にあった輪ゴムで結ばれる。

「お、中々いいじゃん」

「そう?じゃあこのまま結んどこうかな」

宗ちゃんに誉めてもらえるなら、髪を結ぶくらい何でもない。

美容院にだって、行かなくて済む。


そう思って上機嫌になった僕のうなじに、ふ、と柔らかいものが触れた。

「…?宗、ちゃん?」

チュッ、と音を立てて、結い上げられたばかりの髪の束の下からそれが離れていく。

「え?…え!?」

慌ててうなじを抑え、勢い良く後ろを振り向いた。

「宗ちゃん、今…」

――キス、した?

問う前に、宗ちゃんがにやりと口の端を上げた。

「何か、お前のうなじ見てたら…したくなった」

目を細めた、誘うような視線で射抜かれる。

僕はというと、口をぱくぱくさせて宗ちゃんに押し倒されるままにソファに横になった。



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