06

僕は、痛みを手に入れた。





中学二年の春。
新しい教室に入ると、あっという間に数人のクラスメイトに囲まれてしまった。

「聖くん。また同じクラスになれて嬉しいよ」

「あの、駒野くん。はじめまして!」

友人達も、初めて見る顔の同級生も口々に言うので、僕もみんなに笑みで返す。

「ありがとう。よろしくね。僕の席どこ?」

こっちです、と競うように案内され、手にしていた鞄を奪われた。



エスカレーター式のお坊ちゃん学校で、僕はヒエラルキーの頂点に君臨している。

親の職業とか地位とか、自分とはまったく関係のない所で階級が勝手に決まってしまうのは不本意ではあるが、流れに乗って中学生まで来てしまったので、どうしようもできない。

いつもの笑顔を貼り付けて自分の席へ座ると、斜め後ろに全く見知らぬ顔があった。


真新しい、糊のきいたブレザーと真っ白なシャツの襟の上に不機嫌そうな顔を浮かべて。

切れ長の眼が、僕を捉えた。


濁りのない、清らかな瞳。


我を忘れて見つめ返していると、彼はふいっとそっぽを向いてしまった。

「駒野くん、これ。少し遅くなったけど、誕生日プレゼントなんだ」

教室に入ってすぐ、最初に僕に話かけてきたクラスメイトが取り出したのは小さな箱。

「毎年ありがとう。嬉しいな」

「父も母も一緒に選んだんです。駒野くんによろしく、と言ってました」

得意気に言う彼に、周りの生徒はどうやら闘争心が湧いたようだ。

「駒野くん、誕生日いつ?」

「僕は、パーティーの時に持って行くよ。今週末だよね」

「え!誕生日パーティー、やるんですか?僕も行っていいですか?」



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