05
「帰ったぞー」
いつものように自宅の玄関を開けて。
いつものように帰宅を告げた。
「…アレ?」
いつもと違ったのは、聖の出迎えがなかった事。
違和感を覚えつつリビングへ。
壁に掛けられたハイセンスなカレンダーを確認する。
聖の知り合いから誕生日に贈られたもので、四月になると毎年新しいものに替わった。
贈り主の、デザイナーだか何だかの女性の下心を疑わずにはいられない俺。
そのカレンダーの今日の日付に、見慣れたクセのある字で時間と場所がメモしてあった。
知り合いのパーティーに呼ばれているから、顔だけ出してくると言っていたのを思い出す。
聖がいない理由に納得して、軽くシャワーしたあと食事を作る。
袋麺と残り物の野菜を炒めただけの焼きそばと、缶ビールを持ってリビング兼ダイニングのテーブルの前に座った。
テレビでたまたまやっていたサッカーを観戦しながら焼きそばを平らげて、片付けもしないままソファーで寛ぐ。
たまにバラエティー番組にチャンネルを変えたりしながら、過ぎる時間。
自分の家にいるのに、落ち着かないのは何故だろう。
拭えない違和感の正体が分からず、イライラしてきた。
八つ当たり気味にテレビを消して、食器を洗う。
頭によぎるのは、同じことばかり。
――聖は今、何しているんだろう?
酒好きのあいつのことだ、楽しくなって羽目を外しているんじゃないだろうか。
スーツを着て黙っていればカッコ良く見えるし、口説かれたり、迫られたりしていないだろうか。
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