07
手袋をした宗ちゃんの手のひらにはちょこんと小さな雪兎が鎮座していた。
丸い小石の黒い瞳が愛らしく僕を見上げてくる。
「わあー。可愛い」
「結構、上手くできてるだろ?」
いいえ。
僕が可愛いと思ったのは寒い中、雪で兎を作っている宗ちゃんの姿のことです。
いい大人が、一体何をやっているんでしょうね?
鼻を真っ赤にして僕に見せる為に雪をぎゅっと固めている宗ちゃんを想像してにやけてしまう僕。
「ありがと。宗ちゃん」
お礼を言って小さな兎を受け取り、宗ちゃんの頬にキスをする。
音を立てて離れた僕の唇に照れて、宗ちゃんは鼻をすすった。
「寒い。俺、先に風呂入るわ」
「一緒に入る?」
「何で。入らねえよバカ」
「え〜。いいじゃん。たまには〜」
「嫌だ」
「エロいことはしないから」
「嘘つけ」
「あは。バレた」
着替えの準備をする宗ちゃんにまとわり付いていると、怒られてしまった。
「溶けるぞ、ウサギ」
お風呂に逃げ込んだ宗ちゃんの背中を見送って、雪兎を写真に撮る。
冷凍庫に入れる前に兎の額にキスを落とすと、宗ちゃんの頬と同じ温度がした。
お風呂上がりの暖まった宗ちゃんの体には、僕にしかできない方法でたっぷりとお礼をしておきました。
そのせいで外に雪を触りに行くことはできなかったけど、僕には宗ちゃんの作ってくれた可愛い雪兎がいるからいいんだ。
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