06

澄んだ瞳が僕を真っ直ぐに見つめてくる。

いつもの笑顔でその視線を受け止めていると、その色が変わった。

嘲るような瞳で、はっきりと告げられる。

「行かない」

それだけ言って、くるりと背を向けられれば妙に悲しくて、僕は先回りをして彼の進路を塞いだ。

「待って待って!特別な料理も大きなケーキもあるよ。ちょっとした催しもあるし、楽しいから。ね?」

訳も分からず必死な自分が恥ずかしかったが、ここまで来ては引き下がれない。

「会費もプレゼントもいらない。ただ来て、君に楽しんで欲しいんだ」

念を押すように更に、ね、と首を傾げた僕に、彼は明らかに嘲笑した。

「お前さ――」

シニカルな笑みを浮かべて、密やかな声で、囁く彼。

次の言葉に僕は絶句してしまった。



――自分で思ってるより、作り笑い、下手だと思うぞ。



弄ぶような視線に絡め取られたまま。
僕は彼の清廉な瞳を見つめていた。




彼の去ったあと、クラスメイト達が心配そうに近寄ってきた。
口々に彼の事を批判的に責める彼らに笑いかけようとして、頬が引き攣る。

それでも無理やりに笑って、胸に広がる思いを噛み締めた。





笑顔[仮面]の下に何もないことなど、とうに知っている。

僕にも、彼らにも。

それでも笑わずにいられない僕に、彼ははじめての感情をくれた。



痛みの先にあるものを、彼が与えてくれることになると、予感していたのかも知れない。


新しい『僕』を。



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