04

「ほら、離せって」

ぶん、と少し強めに腕を振られる。
宗ちゃんは心底迷惑そうに眉を寄せて、僕を見下ろした。

「いやだ」

言うが早いか、伸ばした脚を持ち上げて、宗ちゃんの脚に引っ掛けた。

思いもよらない僕の行動に、びっくりした顔をしながらバランスを崩す。

宗ちゃんの腕を握っているのとは別の腕を伸ばすと、思い通りに落ちてくる体。

「ばか!危ねえだろーが」

まったく、とため息をついたかと思うと、諦めたように大人しくなった。


毛布を自分の背に回して、後ろから宗ちゃんの体ごと包む。

僕の胸に背中を預けて、宗ちゃんは欠伸を一つ。

宗ちゃんの左の肩に、僕はキスを一つ。

音もたてずに、触れた。

「っ、やめろ」

雨の音しか、聴こえていないフリをする。

返事はせずに、肩や首筋、耳の後ろにも続けて唇を這わせた。


やはり音は、たてないまま。


「…朝からヘンな気分にさせるなよっ」

これ以上は無理とばかりに身を捩るので、後ろから手を回して、口を塞ぐ。

「静かに」

耳に直接囁くと、腕の中で体が跳ねた。

「雨の音だけ、きいてて」

零れる水音よりも密やかな声で。

宗ちゃんの体の自由を奪った。



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