Love&Hate

「おかえりー」

いつものように、仕事を終えて帰ってきた暁人に、キッチンから声をかける。

「ただいま。菫は?」

部屋に菫がいないのを見て、二言目にはコレだ。

オレのことを、気持ちが重いとか、菫好きが重症化してる、とか言うが、暁人も相当なものだと思う。

「今日は麗さんと桃代[ももよ]ちゃんと外食だってさ」

桃代ちゃん、というのは麗さんこと菫の母親の彼女(!)だ。

「お前とふたりか」

若干嫌そうな顔をしながらスーツのジャケットを脱ぎ、ネクタイを緩める暁人。

オレが女なら、その仕草に悲鳴をあげて喜ぶのだろう。

暁人はスタイルがいい。

ブティックの店員らしく、身だしなみにも気を使っているし、顔もそこそこ。

普段は無表情なことが多いが、営業スマイルはゼロ円らしい。

尤も、菫の前では表情筋がゆるみまくっているが。

「ふたりで食うの、久しぶりだなー」

「そうか?菫が受験の時にも、たまにあったろ」

ドサッとソファに身を沈めて、リラックスした状態で暁人が言う。

「その時はお前、菫がいないからって、あんまり食いに来なかっただろ」

「…もう忘れた」

「お前ホントに菫のこと好きだよな」

「うるさいタレ目」

「…そういうこと、言っていいのか?」

「何だよ…気持ち悪いな」

暁人の言に少しムカついたので、無言でテーブルに料理を並べてやった。



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