Love&Hate
「っ…」
料理を見て、暁人の目の色が変わる。
トマトとハーブのサラダ、香草と魚介たっぷりの生春巻き、チキンのバジルソース、つまみにオイルサーディンとブルーチーズ。
菫はハーブや香草が苦手なので、普段はそれを避けたメニューになる。
だが、オレも暁人も香りの強い料理が実は大好物だ。
「せっかくワインも開けようと思ってたのに…いいんだな?」
「飲みたいのは、お前だろう」
暁人は分かりきった顔で笑う。
「まあ、そうだけど」
オレもにひひ、と笑って見せて、ワインを開けた。
「飲もうぜ〜!」
グラスに注いで、一つを暁人に渡す。
「菫がいなかった時みたいだな」
「だなあ…あの頃はふたりなのが当たり前だったよなー」
時が経つのは速いもので。
オレと暁人がふたりで飯を食うようになって四年。
そこに菫が加わるようになって三年になる。
「お前たまには片付けくらいしろよ」
「いいのか?皿が足りなくなるぞ」
試しに言ってみたが、暁人の返事は四年前とほぼ変わらない。
暁人は超絶家事音痴なのだ。
ワイシャツのアイロン掛けもできないから、毎回クリーニングに出すし、オレが作ってやる前は毎日コンビニ飯か外食だった。
あまりに哀れで、オレが残り物を恵んでやる程。
「っとに。変わらないなー」
「お前もな」
グラスを合わせることなく、各々に飲み始める。
まあ、そんな見た目は完璧なのに不器用で、家事音痴で、菫命な暁人も、オレはキライじゃない。
もちろん、一番好きなのは菫だけど!
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