夕映え
紅い頬に、
朱い陽が差し。心の中に、
赤い、
緋い、炎がともる。
「そんなに熱い視線で見つめられたら、僕も焼けてしまいそう」
夜が来る前の空を見上げたまま、隣に立つ彼は言う。
横顔の口の端は穏やかに微笑っていた。
焦がれ、焦がれて。
見つめずには、いられない。
灼ける、心は。
どこか、誇らしい。
それ程、俺は彼を想っている。
「…いい思い出になった?」
けれど、俺の想いは届かない。
決して。
「はい。有り難うございました」
お礼をいいながら、俺も空に目を向ける。
「そう。…それなら、もう。僕は、帰るよ」
くるりと背を向けて、ひらひらと左手を振る彼。
その薬指に空の色が重なって、きらりと光った。
今日で、すべて。
忘れてしまおう、と決めた。
この鮮やかな色を、心に焼き付けて。
知らず、涙が右の頬をつたった。
その、色も。
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