手袋
付き合って一カ月の記念に、プレゼント交換をしよう、と突然言われた。
クリスマスプレゼントが欲しいのなら、素直にそう言えばいいのに、ヘタクソだなと思う。
でも、そんなおバカな所が可愛いな、とも。
待ち合わせに人通りの多い場所を選んだのは、恋人達ばかりで、男同士のカップルがいちゃついていても、誰も気にしないだろうと思ったから。
仕事帰りのスーツ姿の人々に混じって幸せいっぱいのカップルが行き交う中、俺は待ち合わせ場所に急いだ。
吐く息は白く千切れて、冬の大気に溶けて消えた。
寒いのを我慢して、手をコートのポケットに突っ込む。
無理やり詰め込んだプレゼントの包みがカサカサと鳴って、これをあげたらどんな顔をするだろうと、自然と唇がにやけてしまう。
待ち合わせ場所に着くと、満面の笑みでこちらに走ってくる大柄な男。
「ぉす」
「お疲れさま!寒いねー」
ははっと、笑いと共に吐かれた息で穏やかな顔が白く滲む。
ビジネスバッグをもっている手を確認すると、寒さに耐えかねて真っ赤になっていた。
ん、とクリスマスカラーの包みを取り出すと、
「もう?」
と笑われてしまった。
包みを押し付ける俺の頑なな手に負けて、恋人も白い包みを取り出した。
青いリボンがかけられて、解かれるのを待っている。
「メリークリスマス」
「ん。メリクリ」
互いの袋を交換して、目配せをする。
立ったままガサガサとプレゼントの包みを開く二人は、聖夜の恋人達からはどう見えただろうか。
「あ!!」
「マジか…」
包みから出てきた互いのプレゼントを見て、同時に呟く。
それはまるで、示し合わせたかのように同じ色をした手袋。
「以心伝心だねー」
「カブったぁ」
冷え切った手を紺色で包んで、見つめ合って笑った。
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