制服
一分でも、一秒でも長く。
この腕の中にいたい。
明るい色のイヤホンも、着崩した制服も、全てが彼にはぴったりと似合う。
好きなものは好き。
嫌いなものは嫌い。
一度気に入ったものはとことん大事にするたちで、自分も一応彼の『お気に入り』に名を連ねている自覚はある。
鋭い瞳が俺を見下ろして甘く細められるのを見ると、彼の唇を咎めることも出来ない。
見つめられれば、嬉しくて。
触れられれば、舞い上がって。
離れていれば、寂しい。
同じように、彼も思ってくれているだろうから、全てをあげた。
そうしてゼロ距離での温もりを知った、秋の午後。
「じゃ、帰るね」
「おー…」
ベッドから下着姿で起き上がろうする彼を慌てて止めた。
玄関まで見送ってもらうのですら、何故だか今は恥ずかしい。
「でも」
「いいから!ホントにここで」
俺の言葉を聞いているのかいないのか、眠たい目をこすりながらすうっと起き上がって、白い腕をこちらへ伸ばしてくる。
かけ忘れていたシャツの第二ボタンを器用に留めてくれ、よし、と笑ってハグ。
「気をつけて帰れよ」
優しげな声で言われて、名残惜しさが込み上げる。
明日が休みだったら良かったのに。
思ったことを表情で悟られたのか、ひそりと耳元に息がかかった。
「週末は、泊まりに来いよ」
勢いよく頷いた俺の頬は真っ赤だったんだろう。
もう一度、彼がキスしたくなる程に。
←[*] 9/75 [#]→
MAIN