蛍の光
この光は夢か、それとも幻か。
暗闇の中に光が舞う。
目に映る小さなそれはまたたき、宙を彷徨う。
見るからに弱々しい翅を、力強く羽ばたかせながら。
愛を、囁きながら。
仄かな燐光が、隣に佇むまだ幼い彼の横顔を暗闇に浮かび上がらせる。
ふと、こちらを向いた彼が心配そうに言った。
「どうか、した?」
その言葉で、どうかしたように見えるほど顔をしかめていた自分に気付く。
ただ、これからのふたりの事を考えていただけなのに。
「大丈夫」
儚く踊る、小さな光のように。
命を、賭して彼を愛してゆけたらいい、と思った。
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