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禁忌は、蜜の味。
「好きです」
「何度も言うけど、無理」
「ムリじゃないって思うようになるまで何度でも言いますよ、オレ」
一日一回、もしくは二回。
はたまた三回。
オレは、目の前で眉をひそめるこの人に想いを告げている。
時間さえあれば職員室に来て、大声で恋の告白をするオレの存在はすでに校内でも有名。
頑張れよ、とか。
生意気だぞ一年坊!、とか。
卒業するまで待て、とか。
同級生や先輩たち、他の先生達の応援や野次の言葉にももう慣れた。
今日は放課後の、職員用の靴箱で。
出口への道を塞いで立つオレに、困った顔をして、眼鏡のフレームに触れる先生。
靴箱に右の肩を預けたまま、頭を垂れるように、重心を前へ。
先生の艶やかな黒髪が、鼻先に触れる。
「…、っ!ちょ、近…」
そう思うなら、後ろへ下がればいいのに。
距離をとろうとしないのは、なぜですか?
「好きです」
知りたいのです。
その先に、あるはずのモノを。
先生の、心の中に入り込むまで。
あと、一センチ。
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