blue
暗い気配に、囚われてしまわないよう。
少し乱暴に、恋人を抱いた。
涙を浮かべて艶めかしい声をあげてはいたが、本当はどう思ったのか。
聞くのが怖くて、すぐにベッドから抜け出してしまった。
冷蔵庫からミネラルウォーターのボトルを取り出し、グラスに水を注ぐ。
コポコポと、グラスに注がれた水の底から上がってくる、小さな泡沫に見とれた。
暗闇に光る、水底の泡。
泡沫諸共水を飲み干し、再びベッドに潜り込む。
浅い眠りから目を覚まして、朧気な瞳で俺を見る彼。
細い腕を伸ばしてきたので、促されるまま、その腕に包まれた。
「何か、あったの?」
静かに問う声は、どこまでも優しい。
「うん…ごめん」
頷き、小さく謝罪をすると、彼は髪のかかる俺の額に唇を寄せた。
「大丈夫だから。もう、眠った方がいい」
暖かい腕に縋って、息を整えると、すぐに眠気が襲ってくる。
暗闇に眠る、水底の泡。
静寂を纏った、彼の腕の中で。
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