gold
類い希なる、キミの輝き。
「寒いのによくやるー」
暦の上では春、とはよく言ったもので。
寒がりな俺は、未だにマフラーと手袋が外出時の必需品だ。
片や、俺の恋人は。
「良かったー。ちゃんと来てくれて」
グラウンドにふさわしい、見ているこちらが寒くなるような格好だ。
「あれだけしつこく言われたら、来ないわけにはいかないだろ」
フェンス越しに、ぱちりと軽いパンチをすると、ウォームアップ後の身体は、少し湿っていた。
「あのさ…」
近寄れるギリギリまで、顔を近づけてきて。
「終わったら、ご褒美くれる気ない?」
人差し指で、尖らせた唇を示す。
「ばっか!何言って…」
思わず笑ってしまったが、当の本人は至って真面目な様子。
「……。表彰台の、一番高い所に登れたらな」
俺の返事に、目の前の顔がぱっと明るい表情になる。
「見てろよ」
自信たっぷりにそう言うと、不敵な笑みを残して、颯爽と駆けていった。
走り去る後ろ姿の、彼の耳が赤かったのは、多分。
寒さのせいでも、ウォームアップのせいでもないだろう。
←[*] 19/75 [#]→
MAIN