black
いつだって、堕ちていくのは簡単。
夜の淵に体を沈めるようにして生きて、もう何年が経っただろう。
毒々しいネオンの明かりにも、それに群がる人々にも完全に馴染んだ頃。
彼は突然、僕の目の前に現れた。
救いを求めていたわけではない。
僕にとって、僕を必要としているのは、僕だけで。
他の誰にも、必要とされない。
たった一人で、始めから終わりまで。
全てのことを完結させることができたらどんなに良いだろうかと、思っていた。
けれど。
変わらなくては。
彼のために。
這い上がらなくては。
彼が必要とした、僕のために。
この汚れた羽根でも、まだ。
間に合うだろうか。
きっと。
間に合わせてみせるから。
僕を。
僕だけを、見ていて。
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