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君を、穢してみたい。
俺の熱視線に耐えかねたように、こちらを振り向いた同僚は、胡乱な目をしている。
目つきは決して良いとは言えない。
性格も、可愛らしいには程遠い。
『何ですか?』
と、唇だけを動かして。
周囲の社員に気付かれないよう、こちらに問いかけてくる。
もっとも、そうやって気遣った彼らは四角い画面に集中していて、俺達二人のやり取りに顔を上げるものなどいないのだが。
俺が応答なしにただ見つめているだけだと分かると、少し怒ったようにため息をついて、他の社員同様四角い画面に目線を戻した。
高潔な百合の花弁のように、真白なシャツの襟。
他の誰が着ていても、こんな気持ちにはならないのに。
彼の身につけているそれだけは特別に思える。
おろしたての靴で泥の中を歩くみたいに。
一点の濁りもない雪原にめちゃくちゃに足跡をつけるみたいに。
この捻れた想いを、彼に告げたら。
それだけで、彼は穢れてしまうのだろうか。
そしてその瞬間俺は、絶望するだろうか、至上の歓びを手に入れるのだろうか。
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