届かないと知って
窓の向こうからは絶えず笑い声やボールを蹴る音が聴こえてくる。
狭い校庭は昼休みを有意義に過ごそうとする生徒達でいっぱいだ。
その中に、彼もいる。
友達とサッカーに興じて走る背中を、またはその顔を冷たいガラス越しに目で追った。
爽やかに飛び散る汗に、人懐っこい笑顔。
遠くにいても、どれが彼なのか一目で分かってしまう程に。
僕は彼に、恋をしている。
疲れたのだろうか、空を仰ぐ彼。
その目が、僕を見たような気がした。
気のせいだと、分かってはいるけど。
「好きだよ」
想いを、告げずにはいられない。
見つめる先。
彼は校庭に背を向け、どこかへ走り出していた。
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