エンドロール
昼休みの校舎内はざわめきと、かすかな春の匂いに満ち満ちている。
そんな中、息を切らせて階段を駆け上がる少年が一人。
少年は目当ての教室のドアを勢いよく開け、入り口に立ち竦む。
大きな音に驚いて、窓際に立っていた少年が振り返った。
それぞれ教室の入り口と窓際に立ち、互いの顔を見つめる。
窓際に立っていた少年はまるで、恥じらう乙女のように頬を染め、うつむいた。
そこへ、息を整えた少年の言葉が飛ぶ。
「なあ、何か言いたいことあるだろ」
ゆっくりと、うつむけた顔をあげる、窓際の少年。
「……言いたい、こと?」
小鳥の鳴くような小さな声で、言葉を繰り返す。
「そう。俺に、言いたいこと」
ドアも閉めずに、窓際へと近づいて行く少年。
その顔には、人懐こそうな微笑みが浮かんでいた。
「お前が、俺に向かって何か言ってるのが聞こえたんだ」
一歩、また一歩。
ふたりの少年の距離は縮まっていく。
そして、やがて。
新しい春が、訪れるだろう。
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