劇的恋愛音痴

「ちょっとちょーだい」

いつもの仲間達と屋上でお菓子を広げていた。
俺の右手には甘めの炭酸飲料。

それを何の気なしに奪いとって、口をつける仲間の1人。

ペットボトルの飲み口にそいつの口が触れた瞬間、ビビッと体に電流が走る。


間接キスくらいでこんなにもときめいてしまう自分が少し恥ずかしかった。


赤くなってしまっているだろう頬を手の甲でこすりながら

「お前……、ったく、鈍いよなぁ…」

ため息をついて言う俺に目の前の想い人は、ペットボトルから口を離して笑う。

笑ったまま、ゆっくりとその顔が近づいてきた。




何が起こったか分からないまま、至近距離での笑顔を見つめる。

「……は?」

「鈍いのはどっちさ?」

放心する俺の唇にはまだ、柔らかな感触が残っていた。


そして、わずかに甘やかな香り。



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