風薫る
あの空を泳げたら。
風にのって、魚になって。
空にたなびく色とりどりの魚は光を受け、風にまかせて揺れている。
空はただ、青いばかり。
光はただ、白いばかり。
「…あんたみたいだ」
隣に寝ころんで、空を見ていた恋人がぽつりと呟く。
そして、瞳をゆっくりと閉じた。
その瞼に
横たわる首に
露な肩に
滑らかな掌に
裸足のつまさきに
窓から入り込んだ柔らかな風が絡みつく。
光と、風とに遊ばれる彼の姿に触れたくなって。
少しだけ、距離を縮める。
光は、彼の居場所を燦々と照らす。
温もりを分け合うように、そっと手を重ねた。
その指先にも、風は遊ぶ。
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