夢が終わるまでに
三年生の校舎を鼻歌まじりに歩く。
目的の教室は、3ーA。
他学年の校舎を歩いても咎める人のいない放課後。
ゆっくり歩いてもいいはずなのに、僕の足は自然と速くなる。
「せーんーぱい!」
元気よくクラスのドアを開け、視線を教室内へ。
「あれ?」
いつもなら先輩の返事があるはずなのに、それがない。
見ると、先輩は窓際の机に突っ伏して、眠っているようだった。
左手で、道筋をなぞるようにして、机の迷路の中を歩く。
先輩の机にたどり着いたら、その左手で先輩の頭に触れた。
「ゴール」
染められた髪を撫で、ゆっくりと手を離す。
いつもの明るい笑顔も大好きだけど、眠る姿もこの上なく、愛しい。
僕は、男で。
年下で。
まだまだ子供だけれど、でも。
「お願い。先輩、僕を」
―好きに、なって。
眠る先輩の横に、両膝をつく僕。
机の縁に手をかけて、希うように額を両手の甲に預けた。
それは、祈りの姿に見えたかもしれない。
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