抱きしめたい症候群
泣いてる女の子を慰めて、笑顔にするのが、僕の友達の得意技だ。
今も、少し離れた花壇の縁に2人で並んで腰かけて、泣きじゃくる女の子の背中をさすってあげている。
抱きしめて欲しい、と言われれば、その両腕を捧げ。
キスして欲しい、と言われれば、その唇を捧げる。
『女の子は、笑ってる方が可愛いもの』
いつだったか、なぜ彼女でも、好きな子でもない女の子達にそこまでするのか、問うたことがある。
返ってきた単純な答えに、僕は言葉を失った。
ねえ、じゃあ。
僕は―?
君が知らない女の子達を慰めるのを見て、僕はいつも。
心で、泣いているんだけどなあ。
「終わった?」
「ん。落ち着いたみたい。友達とケンカしちゃったんだってさ。でも、もう大丈夫だって」
「っ、そ」
「行こう。1人にしてあげることも、大事」
慰める女の子達の目に見えない痛みや悲しみを、引き受けて。
彼女らと同じように、心揺らす君を。
僕は、いつでも慰めてあげたい。
あの女の子達のように、その腕に抱きしめられるのではなく。
僕のこの両腕で、抱きしめて。
そうしたら、僕の心も泣き止む気がするんだ。
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